日本刀は古くからわが国が誇る鉄の文化財です。
四方山話29「格言和歌色紙図目貫」
2015年08月10日 更新
一、格言和歌色紙図目貫
割際端銘春明(花押)三有斎造
新高法具 天保己未九月刊 法眼
素銅・金無垢昼夜仕立地 片切毛彫
春明法眼の目貫ですと言われたがまず、私には目貫に見えなかった。
ふざけて、余った資材で片手間にこしらえた物としか思えなかった。
何かの勢いで入手することになり持ち帰ったけれど、しばらくは忘れていたような状態で引出しの中に入れっぱなしにしていた。
入手後、初めて眺めてから、気に掛るようになり、いつも身近に置くことになった。
昼夜仕立、金無垢と素銅のことだろう、片切と毛彫、短冊と額、銘の部分も楷書と行書、色紙図だから、九月刊、なのか、春明法眼は面白がるよりも、意識して作っているに違いない。
何もかもが、昼夜仕立で、目貫には見えないように目貫を作っている。明治維新、廃刀令まで三十数年、武家社会の末尾に、金工、としての気分を最大限に浮かばせ、何事にもとらわれず、自由に鏨をふるっている。
日本文化に最大の物を残した時代は室町時代と云われるが、室町時代は政治的には何の力も持たない時代であり、その時代に現在の我々をも包み込む日本文化が発達したとすると、幕末の日本も政治的には混乱の時代であり、当時の金工、その他文化に自由で身に何物をもまとわず、個を発揮する芸術者が多数、生れていたと考えても不自然ではない。
時代が文化を創るなどと大上段に振りかぶるつもりはないが、廃刀令以後の全工達はどこに消えてしまったのか、最後の災を思いっきり輝かせて消えてしまったのかも知れない。
最後に金無垢の色紙の和歌を書いておきます。
「久方の光のどけき 春の日に
しづこころなく 花の散るらむ」 紀友則